世界貿易センタービルから大門駅に移動し、六本木へ。前回東京に来た時には閉館していた国立新美術館へ行こう。
■国立新美術館「ブダペスト ヨーロッパとハンガリーの美術400年」。今一つ有名どころがないせいか、ほぼ混雑していない。最初の方こそちょっと人が詰まっていたが、後半は自由に気持ちよく見ることのできる状態だった。展示はテーマ別にドイツとネーデルラント→イタリア→ヴェネツィア→オランダとコレクションが展示されている。
エル・グレコ「聖小ヤコブ(男性の頭部の習作)」:エル・グレコの作品は何か違うよね。
ペドロ・ヌニェス・デ・ビリャビセンシオ「リンゴがこぼれた籠」:犬にまとわりつかれてリンゴをこぼした少年の白い足が目立つ。そういう趣味の人向けかもしれないと思ってしまう。
フランチェスコ・フォスキ「水車小屋の前に人物のいる冬の川の風景」:冬の風景は何となく共感できる。霧のかかった少々幻想味のある絵画だ。
ルカ・デッラ・ロッビア「キリストと聖トマス」:テラコッタ製でキリストの頭部がないところが残念だ。
ヴィクトル・カイザー「過ぎ越しの祭りの宴」:レリーフで石灰岩に掘っているせいか、線がくっきりと浮き出している。
レオンハルト・ケルン「三美神」:シナノキを使った作品だが、西欧で木彫は珍しいのではないか?
フランツ・クサーヴァー・メッサーシュミット「性格表現の頭像 あくびをする人」:妙にリアルなハゲおやじの彫刻。
フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー「ウィーンのマクダレーネングリュントの物乞いの少年」:あどけない風を装っている少年。こちらに金を求めて手を伸ばしている。その隣の作品では子供が宝石遊びをしており、貧富の差がツラい。
ムンカーチ・ミハーイ「パリの室内(本を読む女性)」:部屋の描写は荒っぽいけど、女性が魅力的。
ギュスターヴ・ドレ「白いショールをまとった若い女性」:ドレってこういう絵を描くのかと思わせる、大きな目をしたアニメ調の女性。あえて目をぼかしている。
シニェイ・メルシェ・パール「ヒバリ」:ヌードの女性が空のヒバリを見上げる作品。女神を描いたわけではないこの作品はやはり非難されたとのこと。ここにもう一人のマネがいた。
ムンカーチ・ミハーイ「フランツ・リストの肖像」:伝統的な肖像画で、リストはズォーダー大帝っぽい顔をしている。
ムンカーチ・ミハーイ「「村の英雄」のための習作(テーブルに寄り掛かる二人の若者)」:古典主義かと思ったミハーイだが、この作品はパンクチュアルな筆跡が残り、近代的リアリズムを感じる。
ムンカーチ・ミハーイ「ほこりっぽい道II」:今度は空気を描いており、ここにターナーがいたと言っておこう。
メドニャーンスキ・ラースロー「岩山のある水辺の風景」:もう少しで抽象画が生まれそう。
アデルスティーン・ノーマン「ノルウェーのフィヨルド」:強い光でフィヨルドを描き、これはセガンティーニ的だ。
ジュール・ジョゼフ・ルフェーヴル「オンディーヌ」:この女性美はアングルの「泉」に近いか。
アルノルト・ベックリン「村の鍛冶屋を訪れるケンタウロス」:ケンタウロスが蹄の蹄鉄を直しに来るというのもユーモラスだが、カラフルな作品で少々意外だ。
レオ・プッツ「牧歌」:水面のモヤモヤしたところは、ムンク入ってます。
リップル=ローナイ・ヨージェフ「赤ワインを飲む私の父とピアチェク伯父さん」:ナビ派の作品で、なんとも童話的で好感が持てる。
ボルトニク・シャーンドル「6人の人物のコンポジション」:20世紀に入った作品も展示されている。これは茶色の男が3人、青い男が3人、幾何学的で前衛っぽい作品。
ブダペストにまつわる美術の400年を追ってくることになったが、やはり同時代の他国の作品や美術の傾向に近いものもあり、当然、様々な情報が入っていたということだろう。ある種の平行進化のような感覚も受けた。
ここから青山墓地の中を歩いて根津美術館へ移動。今回は道に迷わなかったせいか、歩いて15分くらいかなあ。東京の都心は地理さえわかれば、実はいろいろな所に歩いて行けるような気がする。しかも、今の季節は暑くないので、そんなにつらくない。
■根津美術館「<対>で見る絵画」。
狩野山雪「梟鶏図」:梟は上目づかい、鶏は悪い目をしたユーモラスな作品。
宮川長春「見立那須与一図」:船に乗る御簾の影の女性など、実に細やかな描写。
「吉野龍田図屏風」:桜を水の泡ほど大量に描き、紅葉は葉の一部を白抜きにしてバランスをとった作品。
春木南冥「三夕図」:ほぼ水墨ながら、ほんのり水の青、木々の緑が素晴らしい。
「掃象図」:洗われている象が目を細めて喜んでいるかのようだ。
展示室5では「百椿図」というすごい作品も展示されているが、それ以外にも子年にちなんだ、面白い作品が出ている。
円山応挙「鼠宝尽図」:黒目の鼠が可愛い。
河鍋暁斎「鼠獅子舞図」:2匹が獅子舞を、もう1匹がお囃子の音楽を鳴らしている。背景に大黒天の大きな袋が描かれており、暁斎の筆は切れがいい。
「鼠短檠」:油灯篭の皿に自動的に鼠の口から油が落ちるようになっている細工物。
さらにここから、太田記念美術館に歩いて向かう。途中、信じられない人出に出くわすが、そうか、地下鉄の明治神宮前駅の近くに、明治神宮があるのか(←当たり前だ!)。いやー、単なる駅名だと思っているから、気が付かなかったよ(←バカ?)。
■太田記念美術館「開館40周年記念 肉筆浮世絵名品展 歌麿・北斎・応為」。なかなか素晴らしい展覧会。これが700円で見ることができていいのか。
奥村政信「案文の遊女」:客に手紙を書くために、物語を読んで表現の勉強をしているらしい、なかなか素敵な作品。
鈴木春信「二世瀬川菊之丞図」:細い画面になよっと、カラフルな女性を描いた作品。
水野廬朝「向島桜下二美人図」:1450石の旗本だったらしく、高い絵の具を使っているらしい。確かにピンク色の着物は見たことがないかも。
歌川豊広「観桜酒宴図」:あでやかでのんびりとした宴の様子。
歌川国貞「七代目市川團十郎の暫」:ある種の突飛さがすごい。いわゆるKISSみたいなものか。
葛飾北斎「源氏物語図」:カラフルで華やか。凄味がある。
河鍋暁斎「達磨耳かき図」:女性に耳かきをされニヤケそうな、何とかニヒルにとどまっているような達磨である。
菱川師宣「不破名護屋敵討絵巻」:さりげなく、二人の首が吹っ飛んでいるなど、すごい画。
葛飾北斎「雨中の虎」:ギメ美術館の「龍図」と対の作品だという名作。
葛飾応為「吉原格子先之図」:まさに光と影を描き出した作品。吉原の闇を描くのは女性の応為ならではというところもあるだろうか。想像していたのよりかなり小さい作品(A4くらい)だが、迫力がありちょっと驚いた。
これで本日の美術館巡りは終了。
■国立新美術館「ブダペスト ヨーロッパとハンガリーの美術400年」。今一つ有名どころがないせいか、ほぼ混雑していない。最初の方こそちょっと人が詰まっていたが、後半は自由に気持ちよく見ることのできる状態だった。展示はテーマ別にドイツとネーデルラント→イタリア→ヴェネツィア→オランダとコレクションが展示されている。
エル・グレコ「聖小ヤコブ(男性の頭部の習作)」:エル・グレコの作品は何か違うよね。
ペドロ・ヌニェス・デ・ビリャビセンシオ「リンゴがこぼれた籠」:犬にまとわりつかれてリンゴをこぼした少年の白い足が目立つ。そういう趣味の人向けかもしれないと思ってしまう。
フランチェスコ・フォスキ「水車小屋の前に人物のいる冬の川の風景」:冬の風景は何となく共感できる。霧のかかった少々幻想味のある絵画だ。
ルカ・デッラ・ロッビア「キリストと聖トマス」:テラコッタ製でキリストの頭部がないところが残念だ。
ヴィクトル・カイザー「過ぎ越しの祭りの宴」:レリーフで石灰岩に掘っているせいか、線がくっきりと浮き出している。
レオンハルト・ケルン「三美神」:シナノキを使った作品だが、西欧で木彫は珍しいのではないか?
フランツ・クサーヴァー・メッサーシュミット「性格表現の頭像 あくびをする人」:妙にリアルなハゲおやじの彫刻。
フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー「ウィーンのマクダレーネングリュントの物乞いの少年」:あどけない風を装っている少年。こちらに金を求めて手を伸ばしている。その隣の作品では子供が宝石遊びをしており、貧富の差がツラい。
ムンカーチ・ミハーイ「パリの室内(本を読む女性)」:部屋の描写は荒っぽいけど、女性が魅力的。
ギュスターヴ・ドレ「白いショールをまとった若い女性」:ドレってこういう絵を描くのかと思わせる、大きな目をしたアニメ調の女性。あえて目をぼかしている。
シニェイ・メルシェ・パール「ヒバリ」:ヌードの女性が空のヒバリを見上げる作品。女神を描いたわけではないこの作品はやはり非難されたとのこと。ここにもう一人のマネがいた。
ムンカーチ・ミハーイ「フランツ・リストの肖像」:伝統的な肖像画で、リストはズォーダー大帝っぽい顔をしている。
ムンカーチ・ミハーイ「「村の英雄」のための習作(テーブルに寄り掛かる二人の若者)」:古典主義かと思ったミハーイだが、この作品はパンクチュアルな筆跡が残り、近代的リアリズムを感じる。
ムンカーチ・ミハーイ「ほこりっぽい道II」:今度は空気を描いており、ここにターナーがいたと言っておこう。
メドニャーンスキ・ラースロー「岩山のある水辺の風景」:もう少しで抽象画が生まれそう。
アデルスティーン・ノーマン「ノルウェーのフィヨルド」:強い光でフィヨルドを描き、これはセガンティーニ的だ。
ジュール・ジョゼフ・ルフェーヴル「オンディーヌ」:この女性美はアングルの「泉」に近いか。
アルノルト・ベックリン「村の鍛冶屋を訪れるケンタウロス」:ケンタウロスが蹄の蹄鉄を直しに来るというのもユーモラスだが、カラフルな作品で少々意外だ。
レオ・プッツ「牧歌」:水面のモヤモヤしたところは、ムンク入ってます。
リップル=ローナイ・ヨージェフ「赤ワインを飲む私の父とピアチェク伯父さん」:ナビ派の作品で、なんとも童話的で好感が持てる。
ボルトニク・シャーンドル「6人の人物のコンポジション」:20世紀に入った作品も展示されている。これは茶色の男が3人、青い男が3人、幾何学的で前衛っぽい作品。
ブダペストにまつわる美術の400年を追ってくることになったが、やはり同時代の他国の作品や美術の傾向に近いものもあり、当然、様々な情報が入っていたということだろう。ある種の平行進化のような感覚も受けた。
ここから青山墓地の中を歩いて根津美術館へ移動。今回は道に迷わなかったせいか、歩いて15分くらいかなあ。東京の都心は地理さえわかれば、実はいろいろな所に歩いて行けるような気がする。しかも、今の季節は暑くないので、そんなにつらくない。
■根津美術館「<対>で見る絵画」。
狩野山雪「梟鶏図」:梟は上目づかい、鶏は悪い目をしたユーモラスな作品。
宮川長春「見立那須与一図」:船に乗る御簾の影の女性など、実に細やかな描写。
「吉野龍田図屏風」:桜を水の泡ほど大量に描き、紅葉は葉の一部を白抜きにしてバランスをとった作品。
春木南冥「三夕図」:ほぼ水墨ながら、ほんのり水の青、木々の緑が素晴らしい。
「掃象図」:洗われている象が目を細めて喜んでいるかのようだ。
展示室5では「百椿図」というすごい作品も展示されているが、それ以外にも子年にちなんだ、面白い作品が出ている。
円山応挙「鼠宝尽図」:黒目の鼠が可愛い。
河鍋暁斎「鼠獅子舞図」:2匹が獅子舞を、もう1匹がお囃子の音楽を鳴らしている。背景に大黒天の大きな袋が描かれており、暁斎の筆は切れがいい。
「鼠短檠」:油灯篭の皿に自動的に鼠の口から油が落ちるようになっている細工物。
さらにここから、太田記念美術館に歩いて向かう。途中、信じられない人出に出くわすが、そうか、地下鉄の明治神宮前駅の近くに、明治神宮があるのか(←当たり前だ!)。いやー、単なる駅名だと思っているから、気が付かなかったよ(←バカ?)。
■太田記念美術館「開館40周年記念 肉筆浮世絵名品展 歌麿・北斎・応為」。なかなか素晴らしい展覧会。これが700円で見ることができていいのか。
奥村政信「案文の遊女」:客に手紙を書くために、物語を読んで表現の勉強をしているらしい、なかなか素敵な作品。
鈴木春信「二世瀬川菊之丞図」:細い画面になよっと、カラフルな女性を描いた作品。
水野廬朝「向島桜下二美人図」:1450石の旗本だったらしく、高い絵の具を使っているらしい。確かにピンク色の着物は見たことがないかも。
歌川豊広「観桜酒宴図」:あでやかでのんびりとした宴の様子。
歌川国貞「七代目市川團十郎の暫」:ある種の突飛さがすごい。いわゆるKISSみたいなものか。
葛飾北斎「源氏物語図」:カラフルで華やか。凄味がある。
河鍋暁斎「達磨耳かき図」:女性に耳かきをされニヤケそうな、何とかニヒルにとどまっているような達磨である。
菱川師宣「不破名護屋敵討絵巻」:さりげなく、二人の首が吹っ飛んでいるなど、すごい画。
葛飾北斎「雨中の虎」:ギメ美術館の「龍図」と対の作品だという名作。
葛飾応為「吉原格子先之図」:まさに光と影を描き出した作品。吉原の闇を描くのは女性の応為ならではというところもあるだろうか。想像していたのよりかなり小さい作品(A4くらい)だが、迫力がありちょっと驚いた。
これで本日の美術館巡りは終了。