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生ぬるい東京(7)

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神田から上野に移動。上野公園に入ると、何だか想像を絶するような行列ができている。この場所だと東博ではないし、いったい何だろう。列の横を歩いていると、ポスターが見えてきたのでようやくわかった。そう「怖い絵展」の行列なのである。



あまりの人の多さに、私の心の中に「ビートルズでも来日したのかよ」と実に的外れな感想が浮かんだ。ビートルズ来日時には私は生まれてはいるものの、その行列などは見たことが無い。なぜか突然、そんな比喩が出てくるくらいの人の多さに見えたのだ。


→写真で見ると、そうでもないが。

ああよかったと思いながら東京国立博物館へ。直前に混雑情報を見たところ、切符購入、展覧会場への入場がともに待ち時間無しになっていたのだ。確かに券を購入するのも3人くらいしか前にいないし、開場に行くとたちどころに入場することができた。

■東京国立博物館「運慶」。
運慶「毘沙門天立像」:静岡・願成就院の所蔵品。毘沙門天の姿が非常に整っているところも良いが、踏まれている2匹の邪鬼が中が良さそうなのもいい所だ。毘沙門天の持つ槍の柄が片方の邪鬼の背中に刺さっているのだが、もう一方の邪気がその柄を持って、痛くないように支えているのだ。
運慶「無著菩薩立像」:興福寺の所蔵品。まさしく実在した高僧を思わせる顔だが、等身大よりかなり大きく、相当な迫力がある。その表情は諦念を浮かべ、遠くを眺めているようだが、ニューヨーク・ヤンキース所属の田中将大選手に何となく似ていると思うのは私だけだろうか(と思ったら、似てるかどうか投票させるホームページがあった)。



運慶「世親菩薩立像」:こちらは悲しみの表情で、やや人間らしさが強いかもしれない。その代り、瞳の色が非常に薄いところが不思議な感じである。

「大日如来坐像」:栃木・光得寺の所蔵品。大日如来の周りに浮遊している、雲中供養菩薩の造形がいい。
「四天王立像」:これも興福寺南円堂配置のもの。力感あふれる姿は大きく、大迫力の四天王である。多聞天が宝塔を差し上げて、高く天を見る様子が素晴らしい。
「重源上人坐像」:いるよね、こういう味のあるおじさん。

「四天王立像」:京都海住山寺の所蔵品。今度は非常に技巧的で色彩も鮮やかな四天王だ。
「天燈鬼立像」:今初めて気がついたが、天燈鬼の方だけ、第三の目があるんだね。
「十二神将立像」:東博に5点収蔵されているのだが、静嘉堂文庫美術館から残りの7点が来て、42年ぶりの勢ぞろいなのだとか。



さすがに中は混雑していたが、ある程度高い位置に展示されるものが多いので、何とか一通り見ることができた。国宝12点、重文24点、それ以外1点(なんか気の毒だ)というのはさすがに見どころばかりと言えるだろう。

午前中に見た「驚異の超絶技巧!」といい、この「運慶」といい、私が今年購入したモノキュラー(単眼鏡)が大活躍で大変うれしい。後はショップを見るがそれほど欲しいものが無く、十二神将ガチャを2回やり、自分の干支のピンバッチを見事に獲得したのであった。



続いて、もう一つ見ておきたかったのが、東京都美術館の展覧会である。写真撮影が可能だったので、作品もぜひ紹介したい。

■東京都博物館「REALISM 現在の写実展」。
 

橋本大輔「観測所」:温室のような造りの建物。中には水がたまり、木が生え、自然に帰ろうとしているかのようだ。まさに私好み。



小野田尚之「発電所跡」:こちらはもう自然に帰る寸前の建物。



元田久治「Foresight:Tokyo Skytree」:いろいろな建物の滅びの風景を描く人。スカイツリーもいつしかこうなるのだろう。



元田久治「Foresight:Marina Bay Sands,Singapore」:こういう建物として、このホテルが描かれるのは珍しい気がする。分かりやすい建物だ。



稲垣考二「三面」:巨大な3連作の中央部を写したもの。奇怪なイメージとド迫力がすごい(縦400×横972cmもある)。



稲垣考二「夜行」:同一人物のような、少しずつ違う異世界から同じ人を集めてきたような、不思議なイメージ。



佐々木里加「HYPER BRAIN CYBERNETICS」:よくあるような気もするが、スピード感のある作品。



蛭田美保子「捕食-被食関係」:トマトと茄子とパスタの戦い。誰が一番強いのか。それとも三すくみなのか。



岩田壮兵「花の形」:過剰なまでの鮮やかな色彩に目が留まった。



今どきの写実作品を見ることができて、満足した。ひたすら技術的なリアリズムを追及している側面もあるが、概ね「見たことも無いヴィジョン」を描こうとして、取り組んでいるように思える。但し、単に驚かせれば良いというものではないし、画題と技術の追求は難しいものだと思う。

しかし、もうこれで限界&いい時間だ。上野から新橋に移動して、一杯行こう。

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