昼食をすませて、竹橋から向かうのはなんと町田だ。
私は社会人になってすぐ、研修のため約半年、町田の隣の古淵駅の近くに住んでいたのである。住んでいたところは相模原市なのだが、相模原の中心部からは程遠い所であった。その代り、定期券の経路でもあった町田に良く行き、本屋さんに行ったり、休みの日には外食をしたものである。
それから29年が経過し、町田には行く機会がなかった。東京には何度も来ているのだが、町田に行く理由がなかなか無い。今回は見たい展覧会が少ないこともあり、半日かけて町田に行ってみようではないかということになったのである。
約1時間の移動で町田に着き、まず第一の目的は町田市立国際版画美術館だ。駅から歩いて20分くらいの距離だろうか。途中、恐ろしいほどの急坂を下り、やっと目的地に到着。今日の展示は無料で見られるとのこと。
■町田市立国際版画美術館「スティップル・エングレーヴィングとメゾチント」。
ジャック=ファビアン・ゴーティエ=ダゴティ「『人体解剖図』より男性(背面)」:筋肉丸出しの男性像。後頭部がパックリ開き、脳が見えているという図なのだ。4色摺りで、版をあわせるために、針穴見当を用いているらしい。
ジョン・マーチン「『失楽園より』万魔殿の出現」:作品は小さいが、地獄の宮殿が描かれた壮大な作品。これはいい。
フランチェスコ・バルトロッツィ「時の女神ホーラたち-グレイの春によせる頌による」:点描方式で描かれた、実に軽やかな女神像。
ルイス・ホープウッド「『フローラの神殿』より オーリキュラ」:山脈の手前にどーんと大きく花を描いた植物図鑑の図。ある種の不思議さが漂う。
浜口陽三「西瓜」:暗闇に浮かぶ、細長の西瓜。
玉上恒夫「錫ウヰスキーフラスコ」:表面のざらつき加減が実によく表現されている。
今回の展示では原画にターナー、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ルーベンス、ユベール・ロベール等があり、目を引くところだ。後、浮世絵玉手箱と称して、ケースを黒い布で覆っているのを見る人が開いてみるという仕掛けがあった。新鮮な驚きをもたらすと共に、色彩が非常に良く残っている浮世絵なので、それを保護する意味合いもあるだろう。
■町田市立国際版画美術館「2017年度 新収蔵作品展」。
歌川国麿「写生猛虎之図」:写生という割には、模様が豹、頭の形がカワウソのような、ユーモラスな虎なのだ。
三代歌川広重「東京滑稽名所 銀座通り煉瓦造」:馬車と蕎麦屋の出前がぶつかり、そばを取り落としている構図。滑稽というか、いろいろ事故があったのだろう。
月岡芳年「近世人物誌 第十七 西郷隆盛」:大河ドラマあやかり展示か。
作者不詳「日本国海藻一覧」:あらめ、おかひじき、とさかのりといったさまざまな海藻が描かれたもの。こういうのは実に楽しい。
「中城正堯コレクション(中国版画)」:木版多色摺で手彩色ありだそうだが、あまりきめ細かくない色付けで、ピンク色が安っぽさを感じさせる。とはいえ、中国版画を見たことが無いので新鮮だ。
この他、札幌に長く住んでいた(らしい)山内敦子の作品があり、「厚田港」「冬の道庁」など、北海道をテーマにした作品が展示されていた。
この展覧会では、2017年度上半期に新たに収蔵された266点から70点が展示されているそうだ。版画は絵画に比べると価格が安いということもあるが、これだけ新収蔵があるというはなかなか無いことだと思う。今日は常設展しかなかったせいか、観覧者を10人程度しか見かけなかったのだが、ぜひこの美術館を大切にして欲しいものだと思う。
行きとは通る道を変え。また20分ほどかけて町田駅方面に戻る。前述したように、かなりの回数、町田に来ているのでそんな面影を探しつつ散策をする。しかし、どうにもあまり懐かしさがない。さすがに29年ぶりだとなあ。駅前の大きな建物も残ってはいるのだが、ビル名が変わったりしているため、今ひとつピンと来ない。
→小田急線の踏切が、「開かずの踏切」なのは変わっていなかった。
そんな中、「POPビル」というのを見つけたが、ここは記憶がある。確かワンフロア丸ごと古本屋さんという階があるビルじゃなかったか。札幌にももちろん古本屋さんはあるのだが、初めてみる巨大古書店に驚いて、ずいぶん通った記憶がある。
その古書店もこのビルには無いようだが、後で歩いて数分のところに4階建ての古書店となって続いているのを発見した。店名には記憶があるが、建物は変わってしまっているので、懐かしさは感じない。
残念ながら、期待ほど懐かしくはない町田であった。
私は社会人になってすぐ、研修のため約半年、町田の隣の古淵駅の近くに住んでいたのである。住んでいたところは相模原市なのだが、相模原の中心部からは程遠い所であった。その代り、定期券の経路でもあった町田に良く行き、本屋さんに行ったり、休みの日には外食をしたものである。
それから29年が経過し、町田には行く機会がなかった。東京には何度も来ているのだが、町田に行く理由がなかなか無い。今回は見たい展覧会が少ないこともあり、半日かけて町田に行ってみようではないかということになったのである。
約1時間の移動で町田に着き、まず第一の目的は町田市立国際版画美術館だ。駅から歩いて20分くらいの距離だろうか。途中、恐ろしいほどの急坂を下り、やっと目的地に到着。今日の展示は無料で見られるとのこと。
■町田市立国際版画美術館「スティップル・エングレーヴィングとメゾチント」。
ジャック=ファビアン・ゴーティエ=ダゴティ「『人体解剖図』より男性(背面)」:筋肉丸出しの男性像。後頭部がパックリ開き、脳が見えているという図なのだ。4色摺りで、版をあわせるために、針穴見当を用いているらしい。
ジョン・マーチン「『失楽園より』万魔殿の出現」:作品は小さいが、地獄の宮殿が描かれた壮大な作品。これはいい。
フランチェスコ・バルトロッツィ「時の女神ホーラたち-グレイの春によせる頌による」:点描方式で描かれた、実に軽やかな女神像。
ルイス・ホープウッド「『フローラの神殿』より オーリキュラ」:山脈の手前にどーんと大きく花を描いた植物図鑑の図。ある種の不思議さが漂う。
浜口陽三「西瓜」:暗闇に浮かぶ、細長の西瓜。
玉上恒夫「錫ウヰスキーフラスコ」:表面のざらつき加減が実によく表現されている。
今回の展示では原画にターナー、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ルーベンス、ユベール・ロベール等があり、目を引くところだ。後、浮世絵玉手箱と称して、ケースを黒い布で覆っているのを見る人が開いてみるという仕掛けがあった。新鮮な驚きをもたらすと共に、色彩が非常に良く残っている浮世絵なので、それを保護する意味合いもあるだろう。
■町田市立国際版画美術館「2017年度 新収蔵作品展」。
歌川国麿「写生猛虎之図」:写生という割には、模様が豹、頭の形がカワウソのような、ユーモラスな虎なのだ。
三代歌川広重「東京滑稽名所 銀座通り煉瓦造」:馬車と蕎麦屋の出前がぶつかり、そばを取り落としている構図。滑稽というか、いろいろ事故があったのだろう。
月岡芳年「近世人物誌 第十七 西郷隆盛」:大河ドラマあやかり展示か。
作者不詳「日本国海藻一覧」:あらめ、おかひじき、とさかのりといったさまざまな海藻が描かれたもの。こういうのは実に楽しい。
「中城正堯コレクション(中国版画)」:木版多色摺で手彩色ありだそうだが、あまりきめ細かくない色付けで、ピンク色が安っぽさを感じさせる。とはいえ、中国版画を見たことが無いので新鮮だ。
この他、札幌に長く住んでいた(らしい)山内敦子の作品があり、「厚田港」「冬の道庁」など、北海道をテーマにした作品が展示されていた。
この展覧会では、2017年度上半期に新たに収蔵された266点から70点が展示されているそうだ。版画は絵画に比べると価格が安いということもあるが、これだけ新収蔵があるというはなかなか無いことだと思う。今日は常設展しかなかったせいか、観覧者を10人程度しか見かけなかったのだが、ぜひこの美術館を大切にして欲しいものだと思う。
行きとは通る道を変え。また20分ほどかけて町田駅方面に戻る。前述したように、かなりの回数、町田に来ているのでそんな面影を探しつつ散策をする。しかし、どうにもあまり懐かしさがない。さすがに29年ぶりだとなあ。駅前の大きな建物も残ってはいるのだが、ビル名が変わったりしているため、今ひとつピンと来ない。
→小田急線の踏切が、「開かずの踏切」なのは変わっていなかった。
そんな中、「POPビル」というのを見つけたが、ここは記憶がある。確かワンフロア丸ごと古本屋さんという階があるビルじゃなかったか。札幌にももちろん古本屋さんはあるのだが、初めてみる巨大古書店に驚いて、ずいぶん通った記憶がある。
その古書店もこのビルには無いようだが、後で歩いて数分のところに4階建ての古書店となって続いているのを発見した。店名には記憶があるが、建物は変わってしまっているので、懐かしさは感じない。
残念ながら、期待ほど懐かしくはない町田であった。