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秋の東京(2)

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今日は自由行動日であるのだが、月曜日とあって、開いている美術館は限定されている。



■サントリー美術館「京都 醍醐寺」展。
「醍醐寺縁起」:近くの山中の水を飲んだ人が、その美味さに「醍醐味」と言った所から寺の名前がついたそうだ。国宝。
「処分状」:ある僧の心映えが良くないため、弟子に地位を譲らせるということが書いてある。最後に力強く「処分」とあって、書いた人もブチ切れていたのかもしれない。国宝。
「薬師如来および両脇侍像」:圧倒的迫力のある仏像。国宝。

「五重塔初重壁画両界曼荼羅図 旧連子窓羽目板断片」:醍醐寺五重塔の初期の遺構が残っているのだ。国宝。
「五大明王像」:それぞれ高さは1.3mくらいか。東寺に続く五大明王の古作らしい。重文。
「虚空蔵菩薩立像」:一材から掘られた素晴らしい作品。国宝。

「普賢延命菩薩像」:普賢菩薩を支えるのが4頭の象で、さらにその頭には四天王が乗っているというややこしい作品。重文。
「転法輪法条々雑事」「転法輪法次第」:転法輪法の次第と作法、さらに仏具などの配置が記録されたもの。貴重なのだろう。国宝。
「宋版一切経および教函」:カッチリした字で書かれた大作。国宝。

「理性院祖師像」:名僧たちのスケッチのようなもの。国宝。
「秘鈔問答 巻14」:北斗七星を供養する「北斗法」が記載されている。北斗神拳の奥義書(←冗談)。国宝。
「足利尊氏自筆書状」:尊氏のはあまり見たことがない。国宝。

その他の国宝は「普賢延命法略次第」「普賢延命御修法指図」「文殊渡海図」「玄秘抄 巻4」「秘抄 巻2」「薄草子口決 巻20」「当流紹隆教誡」「足利義満御教書」ということで、多分18国宝くらい見たように思う。醍醐寺に行ったことがないだけに、やはりこれは見ておいて良かった。

次の場所にはあまり早くいってもしょうがないので、富士フイルムフォトサロン東京にも立ち寄っておく。



■富士フイルムフォトサロン「林道子写真展 Hodophylax 道を護るもの」。ニホンオオカミをテーマにした写真展で、当然生きたニホンオオカミそのものは(おそらく)いないわけだが、その伝承が今にあるわけだ。



後は「富山治夫 現代語感」という1960年代の日本の写真とその内容を表現する短いキーワードを付与した展覧会があった。それを50年以上経過してから見ると、良いキーワードだと思えるものや、そもそも時代がズレちゃってるなという感覚を得るものもあり、興味深かった。

さあ、まだちょっと早いのだが、そろそろ移動するか。ということで、六本木から上野に移動し、上野の森美術館へ。しかし、入口の行列を見て一旦退散し、ベンチで休憩する。



そう、今日は「フェルメール展」に行くのである。「フェルメール展」は基本的に予約前売りのみであり、私が事前に購入した件(2500円もする)は15時から16時半の間に入場することができ、後は好きなだけ滞在してもいいというルールなのだ(もちろん閉館時間までだが)。

SNSなどのうわさによると、開始時間(私の場合15時)はかなりの行列になり、後半になれば待ち時間なしで入場できる場合もあるということだったので、しばらく時間をつぶして15時半にまた入口に行ってみた。

すると拍子抜けすることに、全く行列が無いのである。入場券を見せてロッカーエリアに入り、こちらも空きが沢山あるロッカーに荷物を入れて、展覧会場に入る。基本的に待ち時間ゼロである。しかし、展示室はさすがにある程度混雑しているようだった。ここで全作品の解説ミニブックと音声ガイド(無料)を受け取る。

ワルラン・ヴァイヤン「花の画家マリア・ファン・オーステルヴェイクの肖像」:古典的写実画。ブルーグレーの透き通るような目がステキ。
ヤン・デ・ブライ「ユーディトとホロフェルネス」:サイズが小さいが、迫真の場面。
シモン・デ・フリーヘル「海上のニシン船」:淡い色彩でセンスが光る。

アブラハム・ストルク「捕鯨をするオランダ船」:ヨーロッパでも「海~ぃの、男にゃよ~」という風景。
ヤン・デ・ボント「海辺の見える魚の静物」:オマール、カニ、タラ、エイ、ヒラメ、カレイと描かれた、写実静物画。
ヤン・ウェーニクス「野ウサギと狩りの獲物」:ウサギのふわふわの毛が生々しい。

ニコラス・マース「窓辺の少女、または「夢想家」」:夢想家という面と、妖しい眼を持つ女の面があるように思える。
ハブリエル・メツー「手紙を読む女」:服などの色彩と白いキラキラがフェルメールを思わせる。
ハブリエル・メツー「手紙を書く男」:今回の収穫。美男にして頭脳明晰そうな男(ただし移り気らしい)。テーブルマットと金属の器の表現がフェルメール的だが、人物の魅力が際立っている。

ピーテル・デ・ホーホ「人のいる裏庭」:端正に整っており、作品自体の輝きを感じる。フェルメールの数少ない風景画を思わせる作品。
ヨブ・ベルクヘイデ「パン屋でレースを編む女」:パン屋とレースのアンマッチはあるが、商家が画題になるくらい力を持って来たということか。

ここで「光の回廊」とでも言うべき通路を抜けて、フェルメールルームに入る。

ヨハネス・フェルメール「マルタとマリアの家のキリスト」:大きくてフェルメールらしからぬ印象を与える作品。姉マルタが妹マリアに対して家事を手伝えというが、イエスが「マリアは良いほうを選んだ」という、フェミニズム的にどうかと思われる作品。
ヨハネス・フェルメール「牛乳を次ぐ女」:画面が明るく、健康的でたくましい印象を与える作品。



ヨハネス・フェルメール「ワイングラス」:男女がワインを飲みながら、なぜか色恋の予感がしない。細かい部分の描写がスゴイ。ステンドグラスから陽が射している。
ヨハネス・フェルメール「リュートを調弦する女」:目がかなり「イッてしまっている」ようにも見える。こちらは埋め込みガラスの窓。
ヨハネス・フェルメール「真珠の首飾りの女」:一度見たことがあるのだが、女性が首飾りをかけ、息を飲んでいるかのような浮きたつ感じが見事に表現されている。日の光を中心に全体に黄色い感じの色彩だが、そこにオレンジ色の髪リボンが光る。

ヨハネス・フェルメール「手紙を書く女」:こちらも恋文であろうが、恋愛の切迫感が感じられない作品。
ヨハネス・フェルメール「赤い帽子の娘」:非常に小さな作品。スナップショットを撮ったかのような作品で、娘も表情を作る暇がなかったという感じだ。
ヨハネス・フェルメール「手紙を書く夫人と召使」:召使は何となく「まあ、いやだこと」と言う顔をしているが、夫人の方はいたって冷静である。



今回、日本には10点のフェルメール作品が来るのだが、1点は大阪会場のみ、1点は1月から公開ということで、8点の作品を見ることができた。作品展数は全部で50点弱と少な目だったが、さすがに1時間半ほど滞在してしまった。そろそろ飲みに行きますか。


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