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東京出張(11) 夏目漱石

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昼食を何とか済ませ、東京藝術大学美術館に戻ってきた。次に見るのは「夏目漱石の美術世界展」だ。しかし私は、漱石の小説をほとんど読んだことが無いんだよな。



橋口五葉「吾輩は猫である(装丁)」:猫の顔をしたエジプト神や、酒をなめる猫のカット。
朝倉文夫「つるされた猫」:手でつまみあげられた猫の彫刻。
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス「シャロットの女」:実に雰囲気のある作品。良く見ると目が少し猫目なのである。

ジョン・エヴァレット・ミレイ「ロンドン塔幽閉の王子」:幼い金髪の王子たち。黒い服が決まっている。
ブリトン・リヴィエアー「ガダラの豚の奇跡」:悪魔がとりついた黒豚が2000匹が谷底にまっしぐら!
伝王淵「蜻蜒図」:博物画のように精密で、かつ優美な名作。重文。

長沢蘆雪「山姥図」:山の頂で、ひょうひょうとした山姥。意外とやさしい人かも。
伊藤若冲「鶴図」:所蔵が書かれていないが、個人蔵なのか? 漱石も「部屋に入った時に逸品と認めた」作だとか。
藤島武二「池畔納涼」:そよ風の感じられるような清涼感のある画。でも、和服って結構暑いよね。

グルーズ原作和田英作模写「少女」:漱石と和田は同時期に欧州に留学していたらしい。
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス「人魚」:上手いだけに足のうろこが不気味だ。
フランク・ウィリアム・ブラングィン「蹄鉄工」:力あふれる男たちは、ともすれば神々のようにも見える。輪郭線の太さが力強さを表している。

青木繁「さだつみのいろこの宮(下絵)」:栃木県立美術館所蔵作品で、見ることができて嬉しい。完成品の下左の女性に感じられる、高揚した感じは表現されていないのだが…。ブリジストン美術館も貸し出してやれよ。
横山大観「瀟湘八景」:独特のバランス感だと思う。重文。
寺崎広業「瀟湘八景」:かなり具象度の高い作品で、大観とは随分違うのが面白い。

坂本繁二郎「うすれ日」:これは哲学の牛だね。何となく薄い画を描く人と思っていたのだが、それだけではないのだ(当り前か)。
南薫造「六月の日」:瀬戸内海の光の中、農作業の合間に水を飲む少年。
萬鉄五郎「女の顔(ボアの女)」:下膨れでピンクの顔をした女。いいねえ。

青木繁「自画像」:藝大所蔵の右目がギョロリとした自画像。
青木繁「運命」:波間で三人の女が水の泡のようなものを奪い合う図。これを大作で破たんなく描けたらなあ。
鹿子木孟郎「某未亡人の肖像」:そこだけ黒い人のかたちをした穴があいているかのような、半分生命を失った人を描いている。上手い。

夏目漱石「閑来放鶴図」:夏目漱石の描いた作品(岩波書店所蔵)も何点か展示されていた。しかし、これが漱石の精神状態を危ぶませるような気配がする作品ばかりなのだ。これは執拗なほど木がみっしり描かれているし、他の作品もくどいほどのこれでもか描写が多いのだ。

多少、展示作品のばらつきはあれど、良い展覧会だったと思う。ウォーターハウス「シャロットの女」は、今年の私が見た名作にランクインすると思う。

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