Quantcast
Channel: 散歩日記X
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4490

こんな時に名古屋(3)

$
0
0
■名古屋市美術館「岸田劉生展」。東京では見なかった展覧会だが、ぜひ見ていこう。
「銀座と数寄屋橋畔」:銀座を素敵な色彩で描いたカラフルな小品。やっぱ「麗子像」よりこういうのが良いな。
「日比谷の木立」:直球で印象派っぽい。
「自画像」:自画像も沢山あったが、東京都現代美術館蔵のこれは萬鉄五郎っぽくもある、フォーヴな感じだ。

「築地居留地風景」:こちらはメルヘンな感じ。初期はいろいろ試行錯誤が多そうだ。
「黒き防止の自画像」:自画像の中でも、密度の濃い気合の入った作品。
「黒き土の上に立てる女」:北海道は小樽の似鳥美術館より出品された作品。周りの作品と見比べても、なかなかいいではないか。

「道と電信柱」:青い空は「切り通しの坂」を思わせるが、ここでは平坦な道が描かれている。
「冬枯れの道路(原宿附近写生)」:原宿とは思えぬ野性的な事前を描いたこの作品は力作だ。手元の小石から空に向かって伸びるような道まで、世界全体が描かれている。
「静物(赤きリンゴ二個とビンと茶碗と湯呑)」:静物画を連続してみると、色彩はかなり違うがモランディを見ているような気になって来た。

「麗子坐像」:ポーラ美術館のこの作品では、解説に「足が痛くて涙が出てきたので、涙がこぼれないようにそっと上を向いた」という麗子本人の話が書かれていた。それに構わなかった劉生だが、画を見ると目の下に薄いハイライトが入って、涙が浮かんでいるようにも見える。画を描く手は止めないという画家の業なのか。
「麦ニ三寸」:風景と麗子像の合体作品である。
「冬瓜図」:瓜のヘタの部分の細密描写なんか、画がメチャクチャ上手いはずなのに、全体としては茫洋としている。

「夏厨黒白」:「黒白」の連作画が6点展示されており(前期/後期で計12点)、いろいろな黒と白のものを対比している。
「春園金鶏之図」:鶏は胴体が赤、黄色と黒の縞、更に緑も入った極彩色で描かれている。
「路傍秋晴」:大連風景なのだが、どこか日本的である。

「満鉄総裁邸の庭」:日本画に転じて平面的な作品が多い印象を受けたが、最後のこの作品がグッと奥行きのあるものだった。

とにかく日本各地の美術館から岸田作品を集めた感じがする。重要文化財の「麗子微笑」は展示期間が終了していたが、それに拘らなくても良いかなと思うくらいの作品があった。まあ、見て良かったと言えるだろう(←偉そう)。



左が涙をこらえる麗子。



これはしりあがり寿作の麗子キャラ。



続いて常設展へ。

■名古屋市美術館「2019年度名品コレクションIII」。
東郷青児「帽子をかむった男(歩く女)」:キュビスム時代の東郷はかなり好きだ。
マルク・シャガール「二重肖像」:花嫁姿の女性とその奥に男性の画家が描かれている。おそらく自分と妻の像なのだろうが、かなり写実に近い感じだ。
藤田嗣治「夢」:眠る裸婦の周りに猫、鳩、狐? などの動物を配した作品。

岩田信市「ファイティング・ビューティ(キック)」:描いた時期には解散していたが、ビューティーペアをモチーフにしたものだろうか。
福本道雄「琵琶湖の凪」:黒く静かに表面が揺らぐ箱のような物体。絶対ベンチと間違えて座った人がいると思う。
三岸節子「雷がくる」:赤と白で幾何学的に構成された街と黒い空を描いた作品。

三輪美津子「STATUE No.4」:石山のような、アイスを何重にも盛ったような絵画作品。
アンゼルム・キーファー「シベリアの王女」:レールがあるので、シベリア鉄道を表現したものだろうか。画の上半分はコンクリートのような灰色に塗られている。
ディエゴ・リベラ「スペイン風景(トレド)」:幾何学的でパステル色の風景画。そういえばこの美術館にはメキシコ系の絵画が常設されているのを思い出した。

大澤鉦一郎「リンゴ三つ」:会ったことはないが、岸田劉生を意識していたという人。岸田劉生展にちなんで、「愛美社」という絵画団体の特集で展示されていた。
大澤鉦一郎「城のある風景」:城よりも手前にある枝をくねらせた木が素晴らしい。
宮脇晴「夜の自画像」:顔に田舎っぽさはあるが、スーパーリアリズムと呼んでも良さそうな高度な技術の作品である。全体的に岸田の影響か、「愛美社」の作品にはリアルな写実画が多かったように思う。

展示室内は撮影不可だった。ロビーや周辺の作品はいくつか撮影できたものもあるので、それはまた別の記事で紹介したい。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 4490

Trending Articles